レンタル・リースと購入の違いとは?サービスの仕組みとリース契約の注意点
 
整形外科を経営する際、治療に使用する医療機器を準備する必要があります。基本的に医療機器は高額なため、資金に余裕がない場合、リースやレンタルの活用がおすすめです。ただし、医療機器の購入は初期費用が高い反面、税制優遇による節税効果が得られます。購入時のメリット・デメリットを把握したうえで、レンタルやリースを利用することが大切です。

 

本記事では、整形外科で使用する医療機器の価格、医療機器を購入するメリット・デメリット、レンタルとリースの仕組みと違い、医療機器をリースするときの注意点について解説します。

 

整形外科で用いる医療機器の価格とは?

整形外科の開業で医療機器を導入する方法は、購入・リース・レンタルの3種類です。まずは医療機器の価格を把握したうえで、どの方法を選ぶか判断するとよいでしょう。整形外科の診療に使用する、医療機器の価格(概算)は次のとおりです。

 

医療機器 概算価格(新品)
一般撮影装置 450万円
CR装置 200万円
CTスキャナ 2,000万円
X線撮影装置 500万円(壁走行型)、600万円(天井走行型)
超音波画像診断装置(カラー) 300万円
超音波骨密度測定装置 100万円
リハビリ機器 1,100万円~1,500万円(内容で異なる)
電子カルテ 400万円(4台構成)

 

新品の医療機器を購入する場合、上記のように数千万円の資金が必要ですが、中古の医療機器を購入すればある程度費用を抑えられます。中古の医療機器の価格は次のとおりです。

 

医療機器 概算価格(中古)
一般撮影装置 100万円
CR装置 100万円
CTスキャナ 700万円
X線撮影装置 150万円
超音波画像診断装置(カラー) 120万円
超音波骨密度測定装置 60万円
リハビリ機器 700万円

 

ただし、中古の医療機器を販売するにはさまざまな許可や遵守すべき事項があります。中古を購入する場合は、販売元が以下のような点を満たしているかを確認してください。
 

  • 医療機器を販売する許可または届出を有した販売業者か
    (高度管理医療機器等販売業・賃貸業許可、
    医療用具専業修理業許可など)
  • 古物商許可証を有している販売業者か
  • メーカーが発行した中古医療機器流通の承諾書があるか

インターネットのオークションやフリマサイトで医療機器を販売する業者は、許可や届出をしていない可能性が高いと考えられます。許可や届出をしていない販売業者から購入した医療機器は、製品の品質や安全性が保証されないことに注意が必要です。

 

医療機器が不良品であっても交換できないうえに、故障したとしても修理を受けられません。不正なルートで売買された医療機器に対し、メーカー側は点検や修理を受け付けないためです。
 
また、医療機器の使用でトラブルが起きた場合、不正な業者から購入したことで損害賠償や社会的な信用を失う可能性もあります。患者さんの健康にもかかわるため、中古の医療機器は正規のルートで販売されているもの購入しましょう。

 

医療機器を購入するメリット・デメリット

医療機器を購入するメリット・デメリット
 
医療機器を購入する前に、具体的なメリットとデメリットを把握しておきましょう。

 

メリット1.トータルの費用を抑えられる

医療機器の購入は初期費用が高額になるため、借入れをして購入するのが一般的です。借入れをすると毎月の返済が発生しますが、購入代金以外に発生するのは利息のみで、費用はある程度抑えられます。
 
一方、リース契約では、月額や年額でリース料を支払い続ける必要があります。利息を含めた借入れの返済と比べても、リース契約の料金は高いことが一般的です。
 
そのため、医療機器を導入する費用をトータルで見た場合、リースよりも購入したほうが費用を抑えられます

 

メリット2.減価償却を費用として計上できる

減価償却とは、高額な資産の購入費用を、耐用年数に応じて分配して経費として計上することです。経費が多いほど所得が減るため、法人税や所得税の節税効果が期待できます。
 
なお、医療機器の耐用年数は、多くの場合4年~8年程度です。医療機器の価格が数百万円であれば、減価償却により数十万円もの金額を経費に計上できます。

 

メリット3.特別償却が適用される

特別償却とは、特定の条件を満たす医療機器を購入すると、普通償却費に特別控除費を加算した額を減価償却費として前倒しで計上できる制度です。特別償却は医師や医療従事者の働き方改革推進による制度であり、2025年3月までに手続きをして共用を開始した場合に適用されます。
 
特別償却を活用すると、例えば500万円以上の医療機器を購入すると12%、30万円以上のソフトや備品の購入で15%を初年度に減価償却費として計上できます。減価償却費が優遇されることで、法人税や所得税の負担が大幅に軽減されます。

 

デメリット1.多額の資金が必要

冒頭で紹介した価格表を見てもわかるように、医療機器を購入してそろえるには十分な資金が必要です。借入れで資金調達する場合でも、返済を見据えてまとまった自己資金を用意したほうが安心でしょう。
 
中古の医療機器であれば費用を抑えられるとはいえ、諸々の機器をそろえるには数百万円以上の資金が必要なうえ、購入したいタイミングに在庫があるとも限りません。そのため、結局は中古の医療機器だけではなく、新品のものと組み合わせる必要があります。
 
なお前述のとおり、中古の医療機器はメーカーに販売を告知し、必要に応じて点検や修理をする必要があります。中古であっても問題なく使えますが、保証期間が短いため故障時にさらに多額の負担が発生する可能性もあるでしょう。

 

デメリット2.新しい機種の乗り換えに手間がかかる

医療機器は次々に新しい機種が開発されており、いずれは機種を乗り換える必要があります。新しい医療機器を購入するには手間と費用がかかるうえに、古い医療機器の処分は所定の手続きと処分手数料が必要です。
 
処分するほかに、中古の医療機器として専門業者に買い取ってもらうことも可能ですが、専門業者の選定や買い取りの手続きなどの手間がかかります。

 

デメリット3.会計処理が負担になる

医療機器の購入で税制上の優遇措置を受けられる反面、会計処理が複雑になることもデメリットに挙げられます。医療機器を扱うには、特別償却を含めた減価償却費に加え、損害保険料を適切に処理しなければなりません。
 
会計処理に慣れていない場合、会計業務の負担が大きくなります。会計処理を税理士に依頼することも可能ですが、特別償却対象の医療機器など、医業税制の知識が必要なうえに、通常の顧問料・決算料のプラスアルファの費用を支払わなければならない場合もあるのでご注意ください。

 

【医療機器】レンタル・リースの仕組み

【医療機器】レンタル・リースの仕組み

 

医療機器の購入が難しい場合、レンタルやリースといったサービスを利用するのがおすすめです。次に、医療機器のレンタル、リースの仕組みについて解説します。

 

医療機器のレンタルサービスとは?

医療機器のレンタルサービスとは、レンタル会社から一時的に医療機器を借りられるサービスのことです。レンタル会社に在庫がある医療機器を、1日単位や数ヵ月単位など必要な期間だけ借りられます。
 
一時的に医療機器が不足したとき、症例が少ない治療や手術が必要なとき、最新の医療機器を利用したいときはレンタルが適しています。
 
レンタル料金は会社によって異なりますが、点検やメンテナンス、医療機器の設置、撤去費用もレンタル料金に含まれています。短期間の利用であればレンタルのほうがコストを抑えられますが、年単位など長期間利用する場合はリースのほうが安くなることが一般的です。

医療機器のリース契約とは?

リース契約とは、おもに5年~7年程度の長期で医療機器を使用できるサービスのことです。

 

レンタルはレンタル会社の在庫から選びますが、リース契約では必要な医療機器をリース会社が購入します。リース会社が医療機器の購入を負担し、契約者は毎月の使用料としてリース料金を支払う仕組みです。

 

医療機器の所有権はリース会社にあるため、リース契約の満了後は再リース、返還、または買い取りのいずれかを選ぶ必要があります。

 

医療機器のレンタル・リースにおける違い

医療機器のレンタル、リースの具体的な違いは、以下のものが挙げられます。

 

借りられる期間の違い

レンタルは1日から数週間単位、リースは数年単位と借りられる期間が異なります。

 

レンタルは料金さえ支払えば、必要な医療機器を必要な期間だけ借りることが可能です。ただし、リース契約ではリース会社が医療機器を購入するため、リース会社によっては事前審査に通過する必要があります

 

なお、リース会社が医療機器を購入し、現物が導入されるまでに時間を要する点もレンタルとは異なります。

 

途中解約の有無

レンタルは必要な期間だけ借りられるため、途中解約をする必要性がありません。

 

一方、リースは数年単位の契約になり、基本的に途中解約には応じてもらえません。リース契約はリース会社が医療機器を購入し、契約期間に応じて毎月のリース料を設定します。仮に途中解約する場合、残りのリース料金を請求されるなど、高額な支払いが発生することが一般的です。

 

料金の違い

リース契約は数年単位と契約期間が長く、短期間のレンタルと比べて毎月の使用料は割安です。リース料金は医療機器の購入金額から設定するため、契約期間が長いほど毎月のリース料は安くなります。

 

ただし、レンタルはメンテナンスや搬出などの費用も料金に含まれるため、契約満了時に別途の費用が発生しないメリットがあります。

 

【医療機器】購入よりもレンタル・リースを選ぶメリット

【医療機器】購入よりもレンタル・リースを選ぶメリット
 

医療機器の購入にはない、レンタルとリースのメリットについて解説します。

 

初期費用を安く抑えられる

医療機器のレンタルやリースを選ぶ最大のメリットは、初期費用を大幅に抑えられることです。医療機器を購入するには数百万円以上の資金が必要になり、借入れに加えてある程度は自己資金も用意する必要があります。

 

一方、リースやレンタルで医療機器をそろえる場合、初期費用が100万円を超えることはほとんどありません。リース料は経費に計上可能なため、初期費用を抑えつつ節税対策の効果も得られます。

 

最新の機種を導入しやすい

医療の技術は日々進歩しており、新しい医療機器を導入すればより良い医療を提供できます。医療機器を購入する場合、新しい機種へと買い換えるたびに、多額の費用と処分の手間がかかります。

 

一方、リースやレンタルであれば、新しい機種を選んで借りることが可能です。医療機器の処分料もかからず、常に新しい医療機器を簡単に導入できます。最新の医療機器により患者さんからの評価が高くなれば、経営もいち早く軌道に乗るでしょう。

 

リース契約の途中解約はできませんが、リース期間を医療機器の耐用年数よりも短くすれば医療機器を短期間で更新することも可能です。

 

ただし、リース契約できる医療機器は、ベーシックな機種に限られる点に注意が必要です。特別仕様が必要な医療機器は、リース契約できないことがあります。

 

事務作業の負担が軽減される

医療機器を購入すると、減価償却における特別償却といった税制優遇が得られます。リースやレンタルでは購入と同じメリットがない反面、リースやレンタルの月額料金は経費として計上が可能です。また、特別償却の優遇がない分、毎月の会計処理が簡単になる点もリースやレンタルのメリットです。

 

なお、医療機器の所有権はレンタル会社やリース会社にあるため、固定資産税や動産総合保険などの支払いや事務処理を行う必要もありません。

 

医療機器をリースするときの注意点

医療機器をリース契約する前に、以下の注意点を把握しておきましょう。

 

リース契約は料金が割高

リース契約は初期費用を安くできる反面、トータルのコストが高くなる可能性があります。

 

毎月のリース料は医療機器の価格に加え、固定資産税、動産保険料、金利などの総額を、リース期間で均等に分割して支払う仕組みです。リースは融資よりも短期間で返済するため、毎月の返済額が高いうえにリース契約で支払う総額も高くなります。

 

なお、医療機器をリース契約する際は、「リース料率」に注目することが大切です。リース料率とは、毎月の返済額を算出する際に用いられる数字です。

 

例えば、リース料率が1.8%で5,000万円の医療機器をリース契約した場合、毎月の支払額は「5,000万円×1.8=90万円」になります。リース契約が5年間の場合、総額は「90万円×12ヵ月×5年間=5,400万円」です。つまり、400万円を余計に支払うことになります。

 

リース契約の期間を短くすると、リース料の総額は安く抑えられますが、契約期間が短いほどリース料率がアップするため、毎月のリース料が高額になる点に注意が必要です。

 

リース契約終了後の選択も視野に入れる

前述のとおり、リース契約の満了後は、再リース・返却・買い取りのいずれかを選択します。一般的に再リースの料金は1/10程度と安くなります。

 

リース契約の満了後も使用できる医療機器であれば、買い取りを選んだほうがよいでしょう。ただし、耐用年数が長く、長期間利用できる医療機器は、リース契約に向かないのが実情です。10年以上使用できるCTなどの大型医療機器は、リースよりも購入したほうがコストを抑えられます。

 

医療機器をリース契約する際は、アップデートの頻度が高く、定期的な買い換えが必要なものを選びましょう。

 

必要に応じてレンタルも活用する

日常的、かつ長期的に使用する医療機器であれば、契約期間が長いリースが向いています。しかし、症例の少ない治療や手術が必要なときはレンタルするのがおすすめです。

 

医療機器のレンタルでは点検やメンテナンスのサービスが含まれているため、故障などのトラブルはすぐに対応してくれます。特に、稼働率が低い医療機器はレンタルにすることで、導入とメンテナンスにかかるコストを削減できます。

 

また、導入を検討する医療機器をレンタルし、使用感を確かめるという活用方法も可能です。リース契約は途中解約ができないため、レンタルを上手に活用することで失敗を防げます。

 

まとめ

医療機器を購入するには多額の資金が必要であり、自己資金と借入れで資金調達しなければなりません。初期費用を抑えつつ医療機器を導入したいときは、レンタルやリースを活用するのがおすすめです。短期間の利用はレンタル、年単位で利用する医療機器はリースが向いています。

 

ただし、購入と比べてトータルのコストが高くなるため、導入は慎重に検討することが大切です。特に、耐用年数が長い医療機器は、リースよりも購入したほうがコストを安く抑えられます。最新の医療機器を導入したいときや、一時的に医療機器が不足した場合などは、レンタルを上手に活用しましょう。
 
本記事に記載しております内容は、2024年1月時点の情報を元にしております。
当サイトのコンテンツや情報において、可能な限り正確な情報を掲載するよう努めておりますが、誤情報や古い情報が含まれる可能性もあります。必ずしも正確性や合法性、安全性などについて保証をするものではなく、何らの責任を負うものではありません。
 
<監修者>

合同会社MASパートナーズ代表 原 聡彦(はら・としひこ)
合同会社MASパートナーズ
代表 原 聡彦(はら としひこ)

 

プロフィール

合同会社MASパートナーズ代表。日本医業経営コンサルタント協会認定コンサルタント。

これまでクリニックの開業コンサルティング150件以上、クリニックの院外事務長などの経営サポートを250件以上など現場主義のサポートに従事。活動の成果を日経ヘルスケアなど専門雑誌での執筆、医師協同組合などの講演活動を展開中。

 

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